オーチャードホールでレニングラード国立バレエの「ドン・キホーテ」を観た。

キトリ: ヴィクトリア・テリョーシキナ
バジル: ファルフ・ルジマトフ
ドン・キホーテ: マラト・シェミウノフ
サンチョ・パンサ: デニス・トルマチョフ
ロレンツォ:パーヴェル・マスレンニコフ
ガマーシュ:アレクセイ・マラーホフ
エスパーダ:デニス・モロゾフ
大道の踊り子:ヴィクトリア・クテポワ
メルセデス:オリガ・セミョーノワ
森の女王:オクサーナ・シェスタコワ
キューピット:ナタリア・クズメンコ
キトリの友達:タチアナ・ミリツェワ、エカテリーナ・クラシューク
ファンダンゴ:アーラ・マトヴェーエワ、リシャート・ユリバリソフ
ジプシー:アンナ・ノヴォショーロワ、アレクサンドル・オマール
ヴァリエーション:オリガ・ステパノワ、ヴィクトリア・クテポワ
二人の闘牛士:アンドレイ・マスロボエフ、ニキータ・クリギン
酒場の主人:パーヴェフ・シャルシャコフ

指揮:ヴァレンティン・ボグダーノフ
管弦楽:レニングラード国立歌劇場管弦楽団


当初のゲストはオブラスツォーワの予定だったが怪我で降板、同じマリインスキーからテリョーシキナが代役でやってくるというのでチケットをおさえた。ボリショイ・マリインスキーガラでの死角のないハイレベルな演技が印象的だったので。会場でキャスト表を見たら森の女王がシェスタコワだったので更に期待度up。

ルジマトフは、年末の「ジゼル」で正直おじいさんになったなあ...と思っていたので、振付けをちょこちょこ変えたあんまり床から離れないバジルは想定の範囲内だった。年初に足を痛めていたのは後から知った。立ち姿や身のこなし、脚や腰のラインが美しいので、余りある主役オーラ。さすが。びっくりしたのはテリョーシキナと息がぴったりだったこと。近年彼の生舞台を何回か見たけど、なんか並のパートナーには入りこめない超然とした世界をまとっている感じだった。シェスタコワのジゼルくらいだったなあ、彼を理解してぴったりと寄り添う姿がさまになっていたのは。その昔ルジマトフが駆け出しのテリョーシキナを自分のガラに抜擢したと聞いた。テリョさんはきっとルジさまに恩義を感じているし、衰えたとは言え超努力家で不世出のダンサーであるルジさまへのリスペクトは相当だろう。ルジさまの方もテリョさんの実力を認めていて、世代をこえた仲間としての連帯感があるのだなと思って見ていた。彼らは「神に選ばれた」特別なダンサーだもの。間違いなく。

そう、テリョーシキナは本物。もう観る前から素晴らしい舞台になるだろうって確信があった。こういう信頼度の高いダンサーって貴重だ。まだ若いのにね(ワガノワを卒業したのが2001年)。美形揃いの最近のバレリーナの中では地味な容姿。でも体の美しいこと!ヴィシニョーワなんかはupして見ると筋肉のすごさに退くけど、テリョさんのはしなやかを保ったまま極限まで鍛えられている。脚が見事なのよね。ディートリッヒばり。関係ないけど私は最近ジムで走るのに凝っていて、ふくらはぎが疲労で痛くなる度に「これでテリョの脚に近づけるかも!」とうきうきしています。で、彼女は筋肉が強靭なだけでなく関節の可動域が大きくて、ポーズを決めた時の反り具合がとても気持ちいい。あくまでマリインスキースタイルにのっとった、理想型を逸脱しない上げ方。音楽性も高くて、完璧に調弦された肢体がオケの音をリードするように舞うのです。気持ちイイ。ピンクのチュチュで踊ったドルネシアは特に芸術性が高かった(シェスタコワ不利...)。ベタ誉めが続くけど、演技力もある。ドンキを踊るのは日本では始めてだそうだけど、キュートで表情のくるくる変わるキトリ、非常に可愛かった。彼女の明るさがルジマトフの不調の影を、被い切ったと思う。

tereshkina Viktoria Tereshkina

災い転じて福となす。人気者のオブラスツォーワの降板とかルジさまの怪我とか、大変だったけど面白い公演だった。すでにバレエファンの間には広まっていると思うけど、跳べないルジさまは3幕のヴァリエーションとコーダを大胆に改変した。キャスト表には載ってないけど、盛装のシヴァコフとプハチョフが影武者として登場。ジャンプはシヴァコフ、マネージュはプハチョフという分身の術で見せ場を盛り上げ、ルジさまはピルエットを頑張った。それにテリョさんの麗しい超絶技巧が加わって、前代未聞のドン・キ。最初はぽかんと眺めていたけど仕組みがわかってなるほど〜となると、若いダンサー達の心意気も見えてきた。みんなルジさまのために、カンパニーのために、自分のパートを必死で踊っていたのね。エスパーダのモロゾフだってルジさまの分!と言わんばかりに跳躍してたしステパノワのヴァリもジゼルのミルタより良かったし、クテポワも自分なりに(笑)がんばってた。シェスタコワはすごく疲れてる感じだったけど森のグラン・ジュテをテリョに負けじと渾身で跳んでいた。テリョーシキナだって本当はさらに大きく踊れるダンサーなんだけど、ルジさまに合わせて上手にまとめている感があった。

バレエは総合芸術だ。ダンサーのレベルという点では大きな劇場に一歩及ばないかもしれないけど、今季もマールイを楽しませてもらった。

Don Quixote